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加来わかりきつたことだ。しかし、病人に危険だと知らせたつて、それや、なんにもなりやしない。黙つて手当さへすればいいんだ。むしろ、必要なことは、少くともわたしの場合には、もう危険信号が間に合はず、文字どほり、これでおしまひだといふことを、その一歩手前で、ともかく、自覚させられることなんだ。わたしは、そのつもりでいたんだ。君も、そのつもりでいたに違ひない。わたしは、今もそのつもりでいる。君は、それがいかんといふ。なにがなんだか、さつぱりわからんぢやないか。
ソヴェト・ロシアには、「労働者クラブ」と云うものがある。これは労働者自身の家で、自分たちの労働が終った後に誰でもが行って楽しめる「クラブ」なのである。
力はただちに動作となって現れねばならぬ。何となれば力の存在と動作とは同意義のものである。したがって力の活動は避け得られるものではない。活動そのものが力の全部なのである。活動は力の唯一のアスペクトである。
加来必要があれば、か。
そして、小声で落語を語りだすと、ミネ子ははじめ面白そうに聴いていたが、しかし直ぐシクシクと泣きだした。赤井の声も次第に涙を帯びて来て、半泣きの声になり、もうあとが続かなかった。そんな心の底に、生死もわからぬ妻子のことがあった。
(一)孟子縢文公上に決汝漢排淮泗而注之江とあり、今の尚書禹貢では江水と淮水とは各々獨立して海に入るので、相通ずることがない。閻若は四書釋地續に於て、朱子の説に從つて孟子が一時の誤記に出でたものとしたが、錢大は孟子ほどの人が禹貢を讀み能はなかつた筈がないといつて、呉淞江、錢唐江、浦陽江の三江さへ江の委であるから、五百里位の距離の淮口も江の下流とするに何の疑があらうといつて、從來學者が淮泗が江に入らぬ證據として擧げた禹貢の沿于江海、達于淮泗の二句を、反つて淮泗が江に注ぐの證とした、焦循の孟子正義は趙注の決、排兩字の注を據として、下流の注入でなく、上流の交會であると、巧妙に解釋したが、要するに皆禹貢が孟子より古く、孟子が之を見ぬ筈がないといふ前提から發したもので、本來は孟子の説が禹貢と違つて居ると見るのが穩當で、孟子は禹貢を知らなかつたと考へて差支ない譯である。墨子の兼愛中篇にも禹の治水を敍して、南爲江漢淮汝東流之注五湖之處以利荊楚于越南夷之民とあれば、禹の治水に關する傳説に、自ら此一派があつて、禹貢とは異つた尚書があつたのであらう。
B――俺は生死の彼方などというものを信じない。死の彼方は空虚な闇であり、生の此方だけが、生のなかだけが、輝かしい光である。俺はその光のうちに彼等を包み込んでおきたい。……単に彼等ばかりではない。あの花籠を持って来てくれた女達や、あの果物籠を持って来てくれた友達のためにも、俺は生きていてやりたいのだ。俺が死んだなら、彼等や彼女達はどんなにか力を落すことだろう。そして俺の敵共は、どんなにか喜んで我儘を振舞うことだろう。味方の者達に悲しみと落胆とを与え、敵の者共に喜びと勇気とを与えること、それをどうして遺憾に思わずにいられよう。
学問性の有つ教導性は、学問の有つ公共性の一つの保証の他ではない。何となれば、教導性とはたとえば学問の教育を説くために指摘された規定であるのではなくして、実は、学問が学問であるためには、個人的人格の内面性を踏み越えることが出来なければならぬという、学問の公共性を説くために採用された規定であるからである。事実、学問に於ては特に、独り好がりを人々は最も悪むであろう。公共性を有たない或る人の理論的労作は、たとい其の人によってどのように価値高く空想されようとも、それであるからと云って学問性を有つことが出来るのではない。従ってそれは厳正な意味に於ける学問の名に値いすることは出来ないと考えられる。今、公共性とは普遍的通用を意味する。併しそれは学問が事実に於て通用し、又は統計上概して通用し、或いは又公算上恐らく通用するであろう、と云うのではない。そうではなくして原則に於て普遍的に通用する筈のものであり、又普遍的に通用して然るべき資格を有つものであることを、それは意味する。学問性を有つが故に却って事実上普遍的に通用せず、学問性を欠くが故に却って事実上一般に学問らしいものとして通用するような、そのような場合を人々は知っているであろう。さてこのような原理的な――単に事実的なものとは異る――公共性を人々は普遍妥当性と呼んでいる。そしてそのような人々は又之を以て学問性の規定と見做しているのである。故に教導性の概念が所謂普遍妥当性の古典的な云い表わし方に相当する一面を有つと云うならば、この言葉は許されるであろう。かくて学問性は普遍妥当性として――但し無論向に規定した通りの教導性に相当する学問に固有な普遍妥当性として――一層確実に規定されることが出来た。
久保田は暫く立つて、本の背革の文字を読んでいた。わざと揃へたよりは、偶然集まつたと思はれるcollectionである。ロダンは生れ附き本好で、少年の時困窮して、Bruxellesの町をさまよつていた時から、始終本を手にしていたといふことである。古い汚れた本の中には、定めていろ/\な記念のある本もあつて、わざ/\ここへも持つて来ているのだらう。
最初に述べた或る男は、其後、私に次のようなことを云った。――あの当時僕は、所謂背水の陣を布いて生きていた。この背水の陣というものは、まかり間違えば、凡てを投り出して自殺するというような、そんななまやさしいものではない。異常な「明日」を責任を以て肯定するという、やさしいようで実は非常に困難な覚悟の肚をすえていたのだ。
さて吾々は手続き――それは理論の誘導性を説明する――としての方法概念と、之から区別された処の考え方としての方法概念とを得た。前者――それは今まで已に吾々に知られていた――がどのようにして後者へ運動し得たかを重ねて述べる必要はもはやないであろう。
私は立ち上って、茶の間の方へ逃げて行った。もし涙を見せようものなら、お父さんは声をあげて泣きだすにきまっているのだ。
細木僕にですか?そんなに、ものを言はれてもいいのかしら?
併し[#「併し」は底本では「供し」]そればかりではない。物質の存在や重力ばかりではなく、電磁気も亦世界の性質から導き出される。ヴァイルによれば、世界――それは一つの幾何学的図形として表現される――の各点は、必ずしも同じ計量の尺度を有つとは考えられない。即ち世界線――ヴェクトル――の計量されたる長さはその移動の道の如何に拘らず不変であるとは限らない。一般に、世界各点は夫々固有の計量の尺度を有ち、世界は計量上の連続をなしている。世界の計量関係は、その時、ガウスの与えた曲率関係だけによるのであってはまだ不定であり、終局的には決定されないであろう。之を終局的に決定すべきである処の他の一つの計量関係、それに於て、恰も電磁気のポテンシャルに相当する諸因子が見出される、というのである*。かくして世界は電磁気の場に同値なる計量関係を有つということが主張される。故に今や、世界はそれ自身の内に、一切の――ニュートンの力学によって与えられたものに限らず――力学的内容を含むことが出来たわけである。
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